今日もうそをついた |
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今日もうそをついた。
今日は、とても辛い日だった。
仕事がぎゅうっと圧縮して押し寄せてくる。それは平凡な私の作業量を遥かに上回っていて、後から後から息もつけぬほどに押し寄せてくる。
そうした時の仕事にロクなものはなくて、あまつさえ、普段ならしないようなつまらないミスがさらに仕事を増やしやがる。
あやまって、あやまって、自分が原因であやまることほど辛いことはなくて、他人が原因のことならばいくら理不尽のことでもむしろ心はかろやかなのに、今日はつまらないことから呼ばれたつまらない私のミスでずっとあやまって、
ああ、もうこの仕事をするに私の器はちいさ過ぎたのだ、と思い悩み(客観的にみたらそうではない側面もあるにはある)、食事もあまり喉を通らず、胃が痛んで、小さくなって、つらくてつらくて、でも同じ業務を担当する私含め3人は、それぞれがそれぞれに、とてもとても仕事に追われていて、それぞれがそれぞれに息苦しくなっていて。
だから、私は言った。
「いやあ、今日はほんとへこんだんすよー」
「あー」
「いやね、何がつらかったってねえ、朝、出かけにお中元が来たんですよ。毎年くれる親戚の人がいるんですね」
「うん?」
「大体、いつも肉か、酒なんですよ。お中元。ハムかエビスビール。なのに、出がけの8時45分にですよ、
三越の人がピンポン鳴らして、なんだと思って出てみたら、小っちゃぁいうす平べったい箱持ってるんす」
「そんな早くにくるんだ」
「くるんすよ。んで、『三年もの手延べ素麺』とか書いてあって。うわぁぁぁぁ、そんないい素麺食べたことない、ないけど! 毎年似たようなものじゃ悪いだろうって気を利かせてくれたんだろうけど!! でも肉がよかった!! 酒がよかった!! 絶望した!! 素麺ですよぉぉぉぉ!!」
「あははははは」
「これがね、もうショックでショックでへこんじゃったんですよ」
「うふふ」
私は、今日も、うそをついた。